アンケート調査結果の統計解析:質問ごとに回答結果を整理する
今回からの数記事では、アンケート調査の結果を分析する手順と方法について解説していきたいと思います。今回は、最初のステップとして「質問ごとに回答結果を整理する」ということについて解説します。
調査結果を一覧表にまとめる
一般的なアンケート調査では、複数の質問(20〜50くらいの場合が多い)を最低でも数十人から数百人に聞くことが多く、その結果をまとめた一覧表には多くのデータが並びます。
例えば回答の選択肢が「1・2・3・4・5」の5件法のとき、通常は次のように結果が並んでいると思います。
| 回答者 | 質問1 | 質問2 | 質問3 | 質問4 | (続く) |
|---|---|---|---|---|---|
| 回答者A | 5 | 2 | 1 | 4 | |
| 回答者B | 3 | 3 | 2 | 4 | |
| 回答者C | 4 | 4 | 1 | 2 | |
| 回答者D | 3 | 2 | 3 | 3 | |
| (続く) |
ここでは回答者4人、質問4つだけの簡単な表を作成しましたが、実際にはもっと大きなデータセットになります。そんなデータの一覧表を見ると、どこからどう手を付ければ良いのか迷ってしまう人も多いと思います。
インターネットや本を調べると、このようなアンケート調査結果の解析方法として「多変量解析」という言葉が出てきますが、いきなり多変量解析を行うのは適切ではありません。これから説明するように、まずは質問ごとに回答結果を詳しく見ていくことが大切です。
質問ごとに集計表にまとめる
まず、質問ごとに回答結果を集計します。下の表のように、人数(度数)と割合の両方をまとめるのが良いでしょう。
| 回答 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1(とても不満) | 20 | 10% |
| 2(不満) | 32 | 16% |
| 3(どちらとも言えない) | 62 | 31% |
| 4(満足) | 56 | 28% |
| 5(とても満足) | 30 | 15% |
| 合計 | 200 | 100% |
集計表を作成する大きな目的はもちろん回答傾向を把握することですが、もう一つの目的はデータの入力ミスを見つけることです。例えば、回答者が200人であったにもかかわらず、上の表の合計人数が199人となっていたら、一人の回答がうまく入力されていない可能性があります。その場合、データ表を見返して、なぜ200人になっていないのか確認します。各質問の回答傾向を把握するとともに、データの入力ミスがないか、この段階で丁寧にチェックしていきます。
また、アンケート調査ではあまり多くないと思いますが、回答結果が身長や体重のような量的データの場合は、次のような度数分布表を作成することができます。
| 身長 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 145〜150 cm | 4 | 2% |
| 150〜155 cm | 10 | 5% |
| 155〜160 cm | 28 | 14% |
| 160〜165 cm | 40 | 20% |
| 165〜170 cm | 44 | 22% |
| 170〜175 cm | 32 | 16% |
| 175〜180 cm | 24 | 12% |
| 180〜185 cm | 14 | 7% |
| 185〜190 cm | 4 | 2% |
| 合計 | 200 | 100% |
基本統計量を計算する
次に、基本統計量(記述統計量、要約統計量)を計算します。基本統計量はほとんどの統計ソフトで簡単に出力することができ、例えば次のような値がすぐに分かります。
基本統計量
平均、標準誤差、中央値、最頻値、標準偏差、分散、歪度、尖度、範囲、最小、最大、合計、標本数
ある評価項目について2つのグループを比較したい場合、それぞれのグループの平均値と標準偏差を見るだけでも、両者が違うかどうか何となく分かるでしょう。複雑な統計解析をしなくても、基本統計量をチェックするだけでデータの傾向をおおまかにイメージできるはずです。
棒グラフ・帯グラフを作成する
集計表を作成して回答傾向を把握することはすでに説明しましたが、傾向をさらに分かりやすく表すためには、表よりもグラフ(図)のほうが適しています。数字の大小を視覚的にとらえることができるからです。
単純に選択肢ごとの人数(度数)をまとめるなら、棒グラフを使用します。
しかし、アンケート調査結果の分析では、人数(度数)よりも割合が重要になることが多いはずです。例えば、質問1には200人が回答したけれども、質問2には180人しか回答しなかった場合、選択肢1を選んだ人が同じ20人だったとしても、その意味は異なります。質問1では10%(=20/200)の回答者が、質問2では11%(=20/180)の回答者が選択肢1を選んだことになるからです。このように回答者の割合に注目したい場合は、帯グラフを使用します(下図)。

基準値と比較する
集計表や棒グラフ・帯グラフが作成できれば、その回答傾向(割合の分布)を基準値と統計学的に比較することができます。ここでいう「基準値」とは、例えば理論的に分かっている割合の分布や、過去の調査結果から得られた割合、目標としている割合などです。ある割合を基準としたときに、今回の調査で観測された割合が統計学的に有意に異なるかどうかを判断します。アンケート質問の数がたとえ1個だったとしても、回答結果が基準値から外れているかどうかを統計学的に調べられるということです。
統計解析の方法は、データの種類によって変わってきます。例えば、順序データや名義データの場合はカイ二乗検定、量的データの場合は1試料のt検定などを使用します。
まとめ
今回の記事では、アンケート調査の結果を分析する最初のステップとして、
- 集計表にまとめる
- 基本統計量を計算する
- 棒グラフ・帯グラフを作成する
- 基準値と比較する
という4点について紹介しました。まずは質問ごとにデータの特徴をしっかり分析して、すべての質問の回答傾向をイメージできるようになることが大切です。次回はこの次のステップとして、二つの質問に対する回答に関連があるかどうか調べる方法について解説します。

この記事を書いた人
田中泰章
Yasuaki Tanaka
プロフィール
自然の仕組みや環境問題、社会・教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに40本以上の論文を出版し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。大学教員としては、これまでに40名以上の学生(学部・修士・博士を含む)を研究指導し、若手研究者を育成してきました。専門は「人間と自然とのかかわり」で、人間活動が自然界に与える影響を生物学・化学・社会学などの複合的な視点から研究しています。
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