統計解析の基本:比較か相関か?
数量データを論文として学術雑誌に掲載するためには、たいていの場合、データを統計学的に解析する必要があります。分野にもよりますが、統計解析がほぼ必須となっている科学分野は非常に多いのではないでしょうか。
一方で、統計解析を苦手としている学生や研究者は多く、統計解析は論文を書く上でちょっとしたハードルになっているとも言えます。その理由としては、統計解析の一般的な参考書では、たくさんの複雑な数式を使いながら基礎理論を解説していることが多いため、何をやっているのかイメージしにくいということが挙げられるでしょう。
理論をしっかり理解しているのに越したことはありませんが、論文を書く上では、「こういうケースではこのように解析する」という実践的な知識・技術が重要になってきます。そこで本サイトでは、基礎理論は最小限にとどめながら、論文を書くために必要な知識や技術に絞って統計解析を解説していきたいと思います。
今回のテーマは、比較と相関です。
統計解析する目的は?
データの統計解析を行うときに、最初に考えなければならないのは、「何を明らかにしたいのか」ということです。統計解析を行う目的をはっきりさせることで、どの種類の解析を行えば良いのか見えてくるからです。
統計解析の種類はたくさんあるように見えますが、論文を書くために必要な統計解析としては、次の二つのパターンが多いのではないでしょうか。
- グループ間を比較したい
- 変量間の関連を調べたい
それぞれについてもう少し具体的に説明します。
グループ間を比較したい
グループ間の比較とは、例えば次のようなケースです。
- ある指標について、実験区と対照区を比較したい(2群間の比較)
- ある指標について、5つの調査地域を比較したい(多群間の比較)
- アンケート調査を行った結果、ある質問に対する回答の傾向について、男性と女性の違いを比較したい(2群間の比較)
異なるグループを比較したいとき、各グループの平均値は簡単に計算できますが、平均値が異なるだけではグループ間に統計的な差があるとは言えません。データのばらつきが大きければ、平均値のわずかな違いは偶然かもしれないからです。そこで、統計解析によってグループ間に差があるかどうかを検証します。
変量間の関連を調べたい
変量間の関連とは、例えば次のようなケースです。
- 観測値Aと観測値Bの間に関係があるかどうか調べたい(相関)
- ある観測値が時間とともにどのように変化するのか調べたい(時系列変化)
- ある観測値に影響を及ぼしていそうな要因A・B・C・D・Eがあり、それぞれの影響度を調べたい(重回帰分析)
- アンケート調査の結果にもとづいて、人々の特徴や傾向を把握したい(主成分分析)
「変量Aと変量Bの間には関係があるのではないか」「こういう状況だと、こういう結果になるのではないか」「こういう性格の人は、こういう行動を取るのではないか」、そういう関連性を検証したいときに行う統計解析です。
多くの場合、これらの解析で検証できるのはあくまで変量間の関連性であり、因果関係ではありません。変量Aと変量Bの間に有意な関連性が確認できたからといって、「Aの原因はBである」のように単純に結論づけられないことに注意しましょう。
まとめ
論文でよく使われる統計解析には、「グループ間の比較」と「変量間の関連」の2種類があることを解説しました。統計解析の参考書を開くとたくさんの解析方法が載っていて分かりにくいかもしれませんが、まずは大きくこの2種類に分けられるということを知っておくと、自分がどちらのタイプの分析をすればよいのか考えやすいでしょう。

この記事を書いた人
田中泰章
Yasuaki Tanaka
プロフィール
自然の仕組みや環境問題、社会・教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに40本以上の論文を出版し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。大学教員としては、これまでに40名以上の学生(学部・修士・博士を含む)を研究指導し、若手研究者を育成してきました。専門は「人間と自然とのかかわり」で、人間活動が自然界に与える影響を生物学・化学・社会学などの複合的な視点から研究しています。
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