研究テーマを見つけるための5ステップ

学生が卒論や修論を書く際に、最初に悩むのが研究テーマです。教員からテーマが与えられている場合は悩む必要がないのですが、研究テーマをある程度自由に決められる場合は、自分が何について調べて書きたいのか最初に決めなければなりません。

また、「指導教員には相談しにくい」という学生も多く、そういう場合はほとんど自力で研究テーマを決めなければならないことになります。

研究テーマについて悩んでいる学生でも、「全く何も思い浮かばない」という学生はほとんどいなくて、多くの学生は「なんとなくこんなテーマ」というおぼろげなイメージは持っています。ただ、そこから「具体的にこういうテーマ」と決めていく過程で足踏みしている学生が多いような気がします。

今回の記事では、「なんとなくこんなテーマ」から「具体的にこういうテーマ」に最短でたどり着くための5つのステップを解説したいと思います。これから卒論・修論・博論などに取り組もうとしている方や、大学院入試のために研究計画書を書こうとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. インターネットで興味のあることを見つける

まずはインターネットを使って、自分が興味のあるテーマをあれこれ探っていきましょう。ニュースや新聞、ブログなど、インターネット上には様々な情報があふれています。図書館や本屋に行くこともできますが、最初の段階としては、幅広く情報を集められるインターネットが最適かもしれません。本屋には最近のトレンドを反映した本が並んでいるので、そういう話題に興味がある場合は本屋に行ってみることもおすすめです。興味がないテーマについて書くのは意欲も起こりませんし、苦痛の時間を過ごすだけになってしまいます。「論文」や「レポート」のテーマとして認められる自由度の範囲内で、まずは自分が興味のあることを見つけてみましょう。

2. 同じ分野の学術論文や書籍にたくさん目を通す

自分が興味のあることが見つかったら、そのテーマに関連するキーワードを考えます。最も重要なキーワードから順に、3〜5個くらいのキーワードを書き出してみましょう。「たった3個から5個?」と思われるかもしれませんが、本当に重要なキーワードというのはそれほど多くありません。自分が何に興味があるのかということをしっかり考えながら、キーワードを書いてみましょう。

キーワードが書けたら、次はそのキーワードを使って学術論文や書籍を検索していきます。学術論文の検索サイトとしては、J-STAGEやGoogle Scholarなどが便利でしょう。書籍を探すのであれば、大学の図書館や住んでいる自治体の図書館などに行くのが良いと思います。

J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

Google Scholar
https://scholar.google.com/?hl=ja

用意したキーワードで論文や書籍を検索すると、おそらくたくさんの文献が表示されると思います。「こんなの全部読めない!」と思うかもしれませんが、すべての文献に目を通す必要はありません。最初の段階では、大部分の文献は「タイトル」だけ見て飛ばし、自分が興味のある「タイトル」だけをクリックして内容を見てみます。パパッと見て、自分が思った内容と違ったり、書いてある内容が難しくて合わなかったりしたら、すぐに閉じて次に行きましょう。そうやって、なるべくたくさんの文献や資料に目を通していくことが、この段階では大切です。

ほとんどの日本人にとっては、英語よりも日本語のほうが内容を早く理解できるので、まずは日本語で検索してみることをおすすめします。分野にもよりますが、例えば科学系だと、日本語より英語のほうがたくさん文献が出てくることが多いので、日本語の文献に慣れてきたら英語でも検索してみましょう。

3. 自分にとって「柱になる論文」を精読する

たくさんの文献や資料に目を通していくうちに、「この内容、分かりやすいし、おもしろい」と思える文献に出会うはずです。そういう文献をいくつかピックアップし、それらを丁寧に読み込んでいきます。この段階では、研究の背景や目的、調査方法、結果、考察など、隅から隅までじっくり読んでいきます。多くの文献を読もうとするのではなく、少数でもいいので、自分が本当に興味のある文献だけを精読していくということです。

ここで一つ気を付けたいのは、文献の出版年です。分野によっては知見の更新が頻繁に行われていて、最近の研究動向が重要視されます。そういう分野では、最初は古い文献に注目してもいいのですが、最終的には最近の文献の中から自分に合った文献を見つけるようにしましょう。文献の出版年は、検索を行うときに簡単に設定できます。

4. 「まだ分かっていないこと」を見つける

いくつかの重要な文献だけを精読していくと、自分が興味のあるテーマに関してこれまでどういう研究が行われてきたのか、現在までに何が分かっていて何が分かっていないのか、どのようにして調査や研究が進められているのかなど、その分野の最前線が分かるようになります。

なかでも最も注目するのは、「まだ分かっていないこと」や「まだ調べられていないこと」です。最近の研究でもまだ調べられていない課題を見つけたり、誰も指摘していない疑問に気付いたりすることによって、それを自分の論文のテーマにできる可能性が高いからです。学術論文では研究の新規性が求められるため、「まだ分かっていない」とか、「まだ誰もやったことがない」というのが重要な評価ポイントになります。そういう記述がないか注意しながら論文を読み進めましょう。

以下に論文を精読するときのポイントをまとめましたので、これらの点を意識しながら読んでみてください。ExcelやWordを使って、文献を整理するのも良いと思います。

論文を精読するときのポイント

  • 「背景」(序論や導入)を読み、その分野の基礎知識を身に付けるとともに、その研究論文で解決しようとしている課題を把握する。
  • 「方法」を読み、その分野の研究方法(調査内容や実験手順、統計解析の方法など)を理解するとともに、自分でもできそうかどうかを判断する。
  • 「結果」や「考察」を読み、結果や考察の書き方に慣れながら、その分野の最新の知見を得る。
  • 「重要だけど、まだ調べられていないこと」を見つける。

5. 自分の研究テーマを決める

自分が興味のある分野の最前線を知り、まだ誰も調べていないことが何となくでも分かれば、あとは先行研究を改良して自分だけの研究テーマを作ります。例えば、研究対象を変えたり、実験方法を変えたり、従来とは逆の仮説を大胆に立ててみたり、先行研究を改良する方法は無限にあると言ってもいいでしょう。

ただし、ここで大切なのは、なぜその改良が必要なのか明確にするということです。その理由こそが、あなたが書く論文の「意義」となるからです。どういう改良を加えればおもしろいのか、どういう新規性がその分野では必要とされているのか、などについて考えてみると、自ずと改良方法が見えてくると思います。

先行研究の改良方法についてはこちらの記事をご覧ください(アカデミックラウンジ・一般向けサイトへ移動します)。

まとめ

今回解説した5つのステップをまとめておきます。

研究のテーマ決めは多くの学生が悩むところですが、上記のようなステップで進めていくとテーマを決めやすいと思います。

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田中泰章(博士)

この記事を書いた人

田中泰章

Yasuaki Tanaka

プロフィール

自然の仕組みや環境問題、社会・教育制度などについて広い視点から考える自然科学者。2008年に東京大学大学院で博士号(環境学)を取得した後、東京大学、琉球大学、米国オハイオ州立大学、ブルネイ大学など、国内外の大学で研究と教育に約15年間携わってきました。これまでに40本以上の論文を出版し、国際的な科学雑誌の査読者として多数の論文審査も行っています。大学教員としては、これまでに40名以上の学生(学部・修士・博士を含む)を研究指導し、若手研究者を育成してきました。専門は「人間と自然とのかかわり」で、人間活動が自然界に与える影響を生物学・化学・社会学などの複合的な視点から研究しています。